芸術家賞賛

July 12, 2011

映画ブラック・スワンを観た。言わずと知れたナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を受賞した作品だ。ナタリー・ポートマンの演技は本当に凄まじかった。全ての感情表現を、顔の表情だけで伝えている。それに声や身体を使った表現も加わり、幾度となく心を揺さぶられた。素晴らしい映画だ。ただ個人的にはこの映画「ナタリー・ポートマンの演技が凄い」という一言に尽きるのだ。残念ながら...。

残念だと思ったポイントをこちらも一言でいうと、この映画「芸術賞賛ではなく芸術家賞賛映画」に思えてならなかったのだ。

“バレエダンサーは普段から魅力的である必要がある”的なセリフがある。言いたいことはよくわかる。しかし、重要なのは“普段から魅力的だから魅力的な演技が出来る”ということではなく“普段はどうあれ魅力的な演技が出来る”ことの方が重要なんじゃないか?

この理屈は“名家に生まれたから成功した”というのと一緒だと思う。成功した人がたまたま名家に生まれたのであって、名家に生まれた人が全員成功する訳ではない(そもそも成功ってなに?というのはここでは問題にしないが)。特に芸術というジャンルでは。

この点スポーツというジャンルでは若干ニュアンスが違ってくる。よく、99%の努力と1%の才能と言うが、スポーツにはあらかじめ決められたルールがある。そのルールに適した(相性が良い)人も居れば、適さない(相性が悪い)人も居る。

だが芸術は違う。ルールなんてない。バレエであれ、演劇であれ、音楽であれ、絵であれ、観る人の心を動かすためにルールなんてない。結果が全てだ。

話が少しそれてしまったが、ブラック・スワンは、バレエではなくバレエダンサーに焦点を当てた映画だ。だからこれで良い。しかしどうしても自分はこの「芸術賞賛ではなく芸術家賞賛」というところが好きになれないのだ。これは完全に好みなのであしからず。

テレビのワイドショーでは芸能人のニュースがひっきりなしに放送されている。所謂「芸能ニュース」というやつだ。しかし昔だれかが言っていた「これは芸能ニュースではなく芸能人ニュースだ」と。その通りだ。果たしてワイドショーのコメンテーターの中にどれくらい「芸能」の話が出来る人がいるだろうか?

こんな殴り書きのような文章になってしまったのでついでにもう一言だけ、音楽について言わせていただきたい。「音楽を奏でるのに生き方は関係ない!」

...おっと熱くなってしまったようだ。ブラック・スワンは非常に良い映画なのでみんな観た方が良いと思うのだ。

Author: Shin Takeda
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