最近の感動した仕事について

December 27, 2009

仲良くしていただいているカメラマンさんが「作品集を作りたいんだよね」と話しているのを聞いて、企画もの好きな自分はずーっと頭の隅で「何かないかな?」と考えていた。

そのカメラマンさんとよく行く居酒屋が神泉にある。そのお店は、カメラマンさんをはじめ、デザイナーさんやコピーライターさんなど、いわゆるクリエーター系の人が集まるお店で「そのお店に集まる人たちで何か作れないか?」なんてことをボーッと考えていた。

9月末。マスターに「このお店をテーマにして写真集を作ろうよ」と話をしようとした矢先に、お店が年内で閉店することを告げられた。

写真集が出来たら、ちゃんと出版して、お店にも置いてもらおうと思っていただけに、根本から企画を練り直し。と、その前に先ず、スタッフを集めることから始めないと...。

当初より、自分は企画/編集に集中したいと思っていたので、何気に大変になりそうなこの仕事では、プロジェクトマネージャー(PM)をしていただける方がいないと...と考えていた。そこで、いつもお仕事をご一緒していただいていて、素晴らしいデザインを作ってくれるデザイナーさんに、ちょっと畑違いだけどPMとして加わっていただくことにした。このプロジェクトでPMとして作品が出来上がれば、今後その方のお仕事の分野も広がると考えたからだ(ちょっと強引だけど本音)。

カメラマンはもちろん前出のカメラマンさんにお願いをする。このお店の常連だ。最近は人物の写真をいっぱい撮影されているとのこと。ご一緒させていただいた仕事でも、素人さんをいっぱい、素敵に撮影していただいた。

次はデザイナー。このお店にも何度か来られている方で、かなりの実績と実力の持ち主のデザイナーさんがいる。いつもいくつもの案件を抱えて忙しくされている方なので、ダメ元で電話してみた。「いいですねー。やりましょう!」おぉ!なんと心強いお言葉。でも非常に厳しい方なのでお願いしたこちらも、ちょっとプレッシャー。でも良いものを作るということはそういうことなのだ。

写真集だけど、少しコピーを添えたものにしたかったので、コピーライターさんにもお声がけさせていただくことにした。このお店の開店当初から常連のコピーライターさん。このお店に来る誰もが知っている方だ。でも待てよ...この方の仕事を私は知らない...。さすがに実績も知らないでお願いするのは失礼、というものなので、その方と一緒にお仕事をされている方づてに、コッソリと実績を拝見さえていただいた。文句無し。決まり。「決まり」って自分が言ってるだけで、その方が受けてくれるとは限らない。案の定、最初は断固拒否された。しかしそこで黙って引き下がるほどヤワな仕事はしていない。あの手この手で口説き落とした。

メンツは決まり。さて企画。忙しい中、みなさんに何度か集まっていただき、二転三転したけど企画は決まった。カウンター越しの、マスターからの目線で、お客さんを撮影することにした。

デザインも、コピーも、そして撮影も。全部大変だったけど、本当に楽しいお仕事になった。そして素晴らしいものが出来上がった。お店が無くなってしまうということもあって、誰もが思い入れの深い作品になった。何人もの人が、写真集を見て泣いてくれているのを見た。お店の方々、お店に来てくれた方々、撮影に参加してくれた方々、制作スタッフ。関係した全ての方々の愛が詰まった、本当にぎっしりと詰まった作品になった。

とても高飛車な言い方になってしまうけれど、作っているときから、みんなに愛される素晴らしい作品を作っているという自負はあった。でも作り終わって、いろんな方々の反応を見ていると、ちょっと違っていた。

“違っていた”という言い方が正しいのかわからないけれど、明らかに自分は、“認識していなかった”。そう、自分は、みんなの、このお店に関わるみんなの、愛情の深さを認識し切れていなかったことに気付かされた。

ひとり一人の反応を見る度に、感想を聞く度に、思い出を聞く度に、出来上がった後なのに、何故か自分の背中にプレッシャーがのしかかってくるのだ。なんでこんなに、みんなの大切なものを、自分なんかが形に残そうと思ったのだろうか?もちろん、軽く考えていた訳ではない。でも、こんなにも、みんなの“想い”が強いとわかっていたら、果たして自分はこの作品を作ろうと思っただろうか?

作品は出来上がっている。もうかなりの人の手元に届いている。でもなんだろう?プレッシャーに押しつぶされそうになる。みんなに「ありがとう」って言われる。愛情の深さを感じて、何度か泣いた。本当に泣いた。なんで泣いてんだろう?

この先自分は、こんなにもみんなに愛される作品を作ることが出来るのだろうか?このプロジェクトは自分の“作りたかったもの”を気付かせてくれた。

当たり前のことだけれども、“作品=愛情の塊”なんだ。

良かった。本当に良かった。ありがとうを言わないといけないのはボクの方なんだ。

Author: Shin Takeda
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