古い友人とすれ違ったこと

November 8, 2010

自宅を出ると目の前の国道を古い友人がバイクで走り去って行った。14年前、一緒に上京してきた友人だ。その友人とはほんの数年前、たまたま道端でばったり再会した。どうやら近所に住んでいるらしい。「久しぶり」ということで携帯番号を交換して「ではまた」となった。だがそのとき既に自分から連絡することはないとわかっていた。

それからしばらくしてその友人から電話があり飲みに誘われたが「また今度」ということになった。会っても昔話をするだけのような気がした。そうじゃないかもしれないが、昔話をするだけの再会ならしない方がマシだ。自分はまだ昔話をして楽しむような年齢ではない。

普段ならすれ違ったあとに「いますれ違ったよ」なんて連絡をすることもある。だがそんな連絡をして何になるというのか。いまでもまだ近所に住んでいるのであればすれ違ってもおかしな話ではない。ただすれ違っただけなのだ。

その友人のことは好きでも嫌いでもなければ関心もない。でも感謝はしている。自分の人生の中で重要な時期を一緒に過ごし、辛い時間を共にしたこともある。だからと言っていま会う必要は無い。いろいろあるかもしれないが、元気で居てくれることがわかっただけで十分だ。

私は “偶然は必然の元に起こり得る” という考えを持っているのでこのすれ違いも必然だと思っている。ただ、どんな結果をもたらすための必然なのかはいまだにわからない。いまは “ただすれ違っただけ” という結果でしかない。しかしそれも良いと思う。すれ違ったからと言って、声を掛けなければならないということはないし声を掛けない方が良いことだってあるかもしれない。ひとつだけ考えられることを言えば、すれ違ったことで私はこのコラムを書いている。そのための必然だったのかもしれない。

Author: Shin Takeda
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